2023年2月26

真理の語り手 重田 園江(著/文) - 白水社 | 版元ドットコム

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784560094754

2022年2月24日、ロシアがウクライナに侵攻し、戦争が始まった。戦争が始まってから、大量の情報が流れてくる。プーチンの思惑やゼレンスキーの戦略、東西の軍事的分析がその中心にある。

戦争を受けて書き下ろされた本書が注目するのは、『全体主義の起源』を書き、ナチスドイツとソ連の体制の〈嘘〉を暴いたハンナ・アーレントである。というのも、ブチャの虐殺はじめ、多くの「事実」が〈嘘〉によって歪められているからだ。こうした事態はいまに始まったことではない。むしろ全体主義体制の本性といえるかもしれない。欺瞞や虚偽は心地よい。圧制下の人々は不意打ちしてくる飾りのない真実より、心地よい嘘を好むのだ。

そして、この戦争をアーレントと同じ眼差しで眺めているのがウクライナの映画監督セルゲイ・ロズニツァだ。彼による『バビ・ヤール』が本書の拠り所になっている。キーウ近郊のバビ・ヤールは「銃殺によるホロコースト」が行われた痛ましい場所だ。

心地よい虚偽にいかに抗していくのか? 本書では、アーレント=ロズニツァに寄り添いつつ、「真理の語り手」の意味を考える。

重田園江(著)。

学びの本質を解きほぐす 池田 賢市(著/文) - 新泉社 | 版元ドットコム

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784787721044

校則で「下着の色」は指定できるのだろうか? グローバル化が進む現在、地毛証明書はとんでもなく時代遅れではないのか? いま、学校で行われているこうした事柄は、学校の外で行ったら人権侵害で、時には犯罪として訴えられてもおかしくないことである。ところが、学校という閉鎖された空間のなかでは、すべてが「学力向上のため」というお題目を立てられ、生徒も保護者もこうしたおかしな校則にも声を上げられない。そればかりか、逆に自ら進んで従順に、隷従していくのである。

学校における「評価」で卒業後の生活の多くが決まってしまう現代社会では、みな、なるべく高い値段をつけてもらえるように頑張り、上手くいかなければ非難され、そして傷つき、疲弊していく。すべてが自己責任であるという間違った道徳的価値を押し付けられているために、その抑圧的な構造を自らが支えてしまっていることに気づかせてもらえない。もし、そのおかしな構造に気づいてしまったら、その子は「問題のある子」として扱われる。それが今の日本の「学びの場」で起きていることである。

著者は、この本で一貫して、「学ぶことの権利」について主張している。本来、学ぶということは、誰かにいい評価をつけてもらうためではない。もっと自由で楽しいものであるはずだ。いい「評価」をもらわなければ!と子どもたちを追い詰める「学校教育」の呪いの正体を探る。

池田賢市(著)。

SNSフェミニズム 井口 裕紀子(著) - 人文書院 | 版元ドットコム

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784409241509

「Me too」運動に代表されるように、現代のフェミニズムはインターネット、特にSNSを舞台に盛んになっている。ネットの世界にとどまらず、現実社会をも動かす大きな力になっているそのムーブメントはいつ生まれ、何を訴え、いまどのようになっているのか。本書では、インターネットを使ったフェミニズム運動が盛んな現代アメリカで活動する300のグループを調査。「参加型政治」と「インターセクショナリティ」を理論軸にその活動を分析し、多様な運動の本質に迫る。

井口裕紀子(著)。

〈戦いの物語〉の政治学 渡部 純(著/文) - 風行社 | 版元ドットコム

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784862581495

「僕は君を守るために戦う(死ぬ)」。日本の映画で、いったいいつから兵士はこう言うようになったのか。そもそも家族や恋人への情愛は、戦争を否定するための論拠だったはずだ。戦後日本における戦争のナラティヴの変容を明らかにする。『シン・ゴジラ』『硫黄島からの手紙』『永遠の0』そして『七人の侍』……。

渡部純(著)。

ヤジと民主主義 北海道放送報道部道警ヤジ排除問題取材班(著) - ころから | 版元ドットコム

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/978-4-907239-65-7

「おかしいことは、おかしいと言う」ーーそんな当たり前のことができない社会になってはいないか?

札幌で街頭演説する安倍晋三元首相に向けて、複数の聴衆が異議申し立てをしました。しかし、警備する北海道警はヤジやプラカードで「声」をあげた聴衆のうち少なくとも9人を強制的に排除したのです。

この”小さな”事件を、しつこく、丹念に追った北海道放送は2020年にドキュメンタリーを2回放送し、特に4月放送の『ヤジと民主主義~小さな自由が排除された先に』はYouTubeでも公開され、36万回再生を記録。さらに、日本ジャーナリスト会議による第63回JCJ賞をはじめ第57回ギャラクシー賞などを受賞しました。そして排除されたうち2人が北海道を訴え、2022年3月に札幌地裁は北海道に対して計88万円を原告に賠償するようにとの判決を下したのです。 同番組の書籍化に際して、この画期的な判決にいたる経緯を追加取材し、『ヤジと民主主義』として刊行します。

北海道放送報道部道警ヤジ排除問題取材班(著)。

首都、東京の都市政策とソーシャル・キャピタル 戸川 和成(著/文) - 晃洋書房 | 版元ドットコム

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784771036925

「世界の学界に貢献する、精緻な実証的データに基づく力作である」辻中 豊 氏

「ソーシャル・キャピタルが都市政策のパフォーマンスを改善する ことを立証し、これまでの定説を覆す注目すべき論稿」稲葉陽二 氏

大規模調査データと多様な分析手法を駆使して、これまでのソーシャル・キャピタルとローカル・ガバナンス研究に欠けていた、体系的な理論的実証分析を提示する画期的研究。

戸川和成(著)。

情報支配社会 ビョンチョル・ハン(著/文) - 花伝社 | 版元ドットコム

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784763420374

デジタル化は本当に私たちを幸福にするのか?

AIとアルゴリズムが消費から投票まで干渉し、あらゆる「無駄(コスト)の削減」を図る現代「デジタル」社会。しかしなぜ、「最適化」された空間でフェイクニュース・陰謀論が跋扈し、和解なき議論が延々と続いているのか? ますます「対話」が困難になり、人々が分断されていく「他者性の喪失」の原因を、デジタル化による「権力支配構造」に見出し、その民主主義への影響を特異な感性で分析する。

ビョンチョル・ハン(著)、守博紀(翻訳)。

年収443万円 安すぎる国の絶望的な生活 小林 美希(著/文) - 講談社 | 版元ドットコム

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784065299289

平均年収443万円――これでは“普通”に暮らすことができない国になってしまった。ジャーナリストが取材してわかった「厳しすぎる現実」。

昼食は必ず500円以内、スタバのフラペチーノを我慢、月1万5000円のお小遣いでやりくり、スマホの機種変で月5000円節約、ウーバーイーツの副業収入で成城石井に行ける、ラーメンが贅沢、サイゼリヤは神、子どもの教育費がとにかく心配……

「中間層」が完全崩壊した日本社会の「本当の危機」とは?

小林美希(著)。

ジェネシス・マシン 合成生物学が開く人類第2の創世記 ナショナル ジオグラフィック(編集) - 日経ナショナルジオグラフィック社 | 版元ドットコム

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784863135321

未来学者エイミー・ウェブと合成生物学のパイオニアであるアンドリュー・ヘッセルが、「生体をプログラミングする」合成生物学の限りない可能性について解説した書。

合成生物学は、これまでのCRISPR(クリスパー)のようにDNA配列を読み取って編集するだけの技術ではなく、コンピューター上でDNA配列をプログラミングし、さまざまな新しい機能を持った細胞、微生物、植物、動物を生み出すことのできる、画期的な技術である。

 通常の数分の1の資源で数百万人を養える屋内栽培可能な植物や、注射を必要としない合成インスリン、培養臓器移植を使った再生医療、高度な個別化医療などの研究が進められており、気候変動、資源枯渇、医療費増大など人類が直面している数々の問題を解決する可能性を秘めている。同時に、合成生物学の普及で、持てる者と持たざる者への社会の分断がさらに進み、破滅的な未来をもたらしかねないという危惧もある。

 本書では、合成生物学が何を可能にし、人類に何をもたらすのかを具体的に示しながら、その倫理的・道徳的・宗教的問題を予測する。老化防止医療が発展し100歳まで若さが維持できるとしたら、社会構造はどう変わるのか。病気と闘うために新しいウイルスをプログラムすることは許されるのか。合成生物学が未来社会にもたらす光と影を、豊富な事例に触れながら解説していく。

ナショナル ジオグラフィック(編集)、エイミー・ウエブ/アンドリュー・ヘッセル(著)、関谷冬華(翻訳)。

転機におけるキャリア支援のオートエスノグラフィー 土元 哲平(著/文) - ナカニシヤ出版 | 版元ドットコム

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784779516870

現在ある自己は,折々の転機に際し,どう選択をし,どうのり越えてきたのか。その折々に,どのような相互交流があり,どのような支援に巡り合ったのか。今ある人生は結果としてどのような文化の産物なのか。

土元哲平(著)。

分析フェミニズム基本論文集 木下 頌子(編訳) - 慶應義塾大学出版会 | 版元ドットコム

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784766428551

近年盛り上がりを見せる「分析フェミニズム」の重要な論文を紹介。

分析フェミニズムは、英米系の分析哲学と呼ばれる潮流のなかでフェミニズムに関わるさまざまな問いに取り組む分野である。たとえば、「女性」概念をどう定義すべきか、性的なモノ扱いとはどういうことか 、マイノリティの声はどのように封じられるのか、トランスジェンダーの人々を抑圧するレトリックの根底にあるものは何か、といった問いが分析哲学の手法を用いて論じられている。

本書では、形而上学、認識論、倫理学の主要なトピックから、代表的な論文8本を選定。いずれも海外のフェミニズム哲学の授業で頻繁に購読されている必読論文である。

木下頌子/渡辺一暁/飯塚理恵/小草泰(編訳)。

領域を超えない民主主義 砂原 庸介(著/文) - 東京大学出版会 | 版元ドットコム

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784130301879

地方政府は広がる都市の問題を解決できるのか。住民投票は地方の究極の民主主義なのか。日本の地方政治が抱える構造的問題を抉り出し、解決の糸口まで示唆する。サントリー学芸賞・大佛次郎論壇賞を受賞した注目の研究者による鋭利な地方政治論。

砂原庸介(著)。

傷つきやすいアメリカの大学生たち ジョナサン・ハイト(著/文) - 草思社 | 版元ドットコム

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784794226150

立場の異なる論者の講演に対し、破壊と暴力をともなう激しい妨害を行う学生たち。教員の発言の言葉尻を捉えて糾弾し、辞任を求める激しいデモを展開。 さらには教授や学部長、学長までを軟禁し、暴言を浴びせる――。

アメリカの大学で吹き荒れるこれら異常事態の嵐は、Z世代の入学とともに始まった。彼らはなぜ、そのような暴挙を振るうのか? 言論の自由・学問の自由を揺るがす現象の実態と背景、さらには対策までを示して高く評価された全米ベストセラーがついに邦訳。キャンセルカルチャー、ポリティカル・コレクトネス(ポリコレ)問題を知るための必読書。

ジョナサン・ハイト/グレッグ・ルキアノフ(著)、西川由紀子(翻訳)。

金融人類学への誘い 宮崎広和(著/文) - 水声社 | 版元ドットコム

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784801006737

《信じること》と《疑うこと》の狭間で 裁定取引とはなにか? 日本の証券トレーダーたちの思考と実践から、「終わり」の感受性に迫る。

アービトラージに夢を託し、その終焉に自らの人生を重ねる金融トレーダーと人類学者との邂逅が生み出した最高峰のモノグラフ。 ――岩井克人

宮崎広和(著)、木村周平/深田淳太郎/早川真悠/高野さやか(訳)。

失業を埋めもどす 森 宜人(著) - 名古屋大学出版会 | 版元ドットコム

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784815811037

失業はいかにして発見され、社会政策の中心課題になったのか。繰り返し大量失業に悩まされたドイツにおいて、都市が国家に先駆けてセーフティネット構築をはかる姿を初めて解明、慈善団体や国家との対抗/連携の過程も鮮やかに捉えて、労働をめぐるモダニティの大転換を、現代も視野に描き出す。

森宜人(著)。

社会関係資本 ジョン・フィールド(著) - 明石書店 | 版元ドットコム

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784750354408

社会の格差はどこからくるのか? それを克服する展望は? 人々の関係性に着目してこの問題に接近する「社会関係資本」概念。この概念を起源から紐解き、人脈や信頼が持つ正と負の影響力、デジタル時代の新たな動向も踏まえ、この概念の全体像を描き出す入門書。

ジョン・フィールド(著)、佐藤智子/西塚孝平/松本奈々子(訳)、矢野裕俊(解説)。

『スティグマ』というエニグマ 薄井 明(著/文) - 誠信書房 | 版元ドットコム

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784414501117

ゴフマンの生誕100年、没後40年が経った現在でも、ゴフマン社会学の理解は十分ではない。そこで、主著である『スティグマ(Stigma)』を取り上げ、その詳しい解説と部分的な応用を試みたのが本書である。

難解で正体がつかめないと評される『スティグマ』は、「謎めいた文章」を意味するまさに「エニグマ」である。本書はその難解さを解読する装置の役割を果たし、ゴフマン社会学の本格的な理解と応用への橋渡しとなる。

薄井明(著)。

蛇と梯子 セリーナ・トッド(著/文) - みすず書房 | 版元ドットコム

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784622095415

「どんな来歴の持ち主であれトップにのぼりつめる機会は与えられている」(マーガレット・サッチャー)。「社会的流動性こそがイギリス的生活の主要要因とみなしたい」(トニー・ブレア)。パイオニア世代からミレニアル世代まで19世紀末から20世紀末にかけて生まれた7つの世代の証言をたどりつつ、英国社会の特徴と謳われた「社会的流動性」とメリトクラシー社会の実相を探る。エゴドキュメントで読みとくイギリス現代史。

セリーナ・トッド(著)、近藤康裕(翻訳)。

人権の世界史 ピーター・N・スターンズ(著/文) - ミネルヴァ書房 | 版元ドットコム

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784623092185

本書は、18世紀に欧米で現れた人権概念の現代までの世界史を鳥瞰する。「普遍的人権」概念は様々な抵抗を受けつつ拡張と収縮を繰り返してきた。世界貿易と資本主義の拡張に伴い、「普遍的人権」概念を他地域に押しつける植民地主義的人権論は、反動を引き起こしつつも、西欧からその他地域へと広がってきた。子供、女性、同性愛者、環境保持の権利等「新しい人権」概念も含め、その成立と展開、変容を辿る。

ピーター・N・スターンズ(著)、南塚信吾/秋山晋吾(監修)、上杉忍(翻訳)。

戦争の世界史 マイケル・S・ナイバーグ(著/文) - ミネルヴァ書房 | 版元ドットコム

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784623094233

本書が扱うのは過去2500年にわたる戦争の歴史である。その間に起こった幾多の戦争のうち、とくに歴史的転換点を画した重大な戦闘を取り上げ、その世界史的な意味を読者に問う。考察の対象はグローバル時代の研究状況を踏まえ、西洋中心ではなく、カナダ、アフリカ、日本、ヴェトナム、ソ連、トルコなどの戦場に及ぶ。そこで非西洋社会が世界全体に与えた衝撃の大きさを強調すると共に、現代史学における重要な方向性を指し示す。

マイケル・S・ナイバーグ(著)、南塚信吾/秋山晋吾(監修)、稲野強(翻訳)。

「社会正義」はいつも正しい ヘレン・プラックローズ(著/文) - 早川書房 | 版元ドットコム

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784152101877

フェミニズム、クィア理論、批判的人種理論――〈社会正義〉の御旗の下、急激な変異と暴走が続くポストモダニズム。「第二のソーカル事件」でその杜撰な実態を暴き、全米に論争を巻き起こした著者コンビが、現代社会を破壊し続ける〈理論〉の正体を解明する!

ヘレン・プラックローズ/ジェームズ・リンゼイ(著)、山形浩生/森本正史(翻訳)。

政治的身体とその〈残りもの〉 ジャコブ・ロゴザンスキー(著) - 法政大学出版局 | 版元ドットコム

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784588011511

国家を含むすべての共同体が、なぜ、そして、どのように自らを人間の身体として形象化するのか。さらには、なぜ、自らの内部にホモ・サケル、不可触賤民、部落民、「内部の敵」といった残余、〈残りもの〉、おぞましいものを作り出し、それらを排除しつつも含み込むのか。現在最も注目されている哲学者が、デリダと民主主義、メルロ=ポンティと肉の共同体、今日のエピデミックの経験などとともに、ラディカルに「政治的身体論」を展開する。

ジャコブ・ロゴザンスキー(著)、松葉祥一(編訳)、本間義啓(訳)。

ハッピークラシー エドガー・カバナス(著/文) - みすず書房 | 版元ドットコム

https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784622095491

「幸せの追求はじつのところ、アメリカ文化のもっとも特徴的な輸出品かつ重要な政治的地平であり、自己啓発本の著者、コーチ、[…]心理学者をはじめとするさまざまな非政治的な関係者らの力によって広められ、推進されてきた。だが幸せの追求がアメリカの政治的地平にとどまらず、経験科学とともに(それを共犯者として)機能するグローバル産業へと成長したのは最近のことだ」(「序」より)。

ここで言及される経験科学とは、90年代末に創設されたポジティブ心理学である。「幸せの科学」を謳うこの心理学については、過去にも批判的指摘が数多くなされてきた。本書はそれらをふまえつつ、心理学者と社会学者の共著によって問題を多元的にとらえた先駆的研究である。 「ハッピークラシー」は「幸せHappy」による「支配-cracy」を意味する造語。誰もが「幸せ」をめざすべき、「幸せ」なことが大事――社会に溢れるこうしたメッセージは、人びとを際限のない自己啓発、自分らしさ探し、自己管理に向かわせ、問題の解決をつねに自己の内面に求めさせる。それは社会構造的な問題から目を逸らさせる装置としても働き、怒りなどの感情はネガティブ=悪と退けられ、ポジティブであることが善とされる。新自由主義経済と自己責任社会に好都合なこの「幸せ」の興隆は、いかにして作られてきたのか。フランス発ベストセラー待望の翻訳。

エドガー・カバナス/エヴァ・イルーズ(著)、高里ひろ(翻訳)、山田陽子(解説)。